四十肩・五十肩

四十肩・五十肩は、肩まわりの組織が炎症を起こしている状態です。
四十肩と五十肩は同じもので、発症する年代によって呼び方が異なります。
四十肩・五十肩の発症原因や、肩こりとの違いについてご紹介します。

 

【四十肩・五十肩の原因】

四十肩・五十肩を発症する原因は明確になっていません。
しかし、次のようなことが四十肩・五十肩の原因に関係しているといわれています。

●加齢による柔軟性の低下

年齢を重ねると肩まわりの筋肉や関節などの組織は柔軟性が低下するといわれています。
肩まわりの柔軟性が低下して固まっている状態になっているにも関わらず、無理に動かしてしまうことで炎症して四十肩・五十肩につながります。

●運動不足、ストレッチ不足

運動やストレッチが不足すると、肩まわりの筋肉や腱などの組織が硬くなる傾向にあります。
「通常よりも負担がかかりやすくなる」ことや、「血流不良によって炎症が起こりやすくなる」ことによって、四十肩・五十肩を発症する可能性があります。

●肩こり

肩こりは肩まわりの筋緊張を起こしている状態です。
慢性的な肩こりがあると、肩まわりの筋肉が硬くなっているため、四十肩・五十肩を発症しやすいといわれています。
肩こりは「デスクワークや運転などで長時間同じ姿勢が続く」ことや、「日常の不良姿勢」などが原因で生じます。

 

【肩こりと四十肩・五十肩の違い】

四十肩・五十肩は肩こりが悪化したものと考える方も多いようですが、肩こりとは異なるものです。
肩こりは肩まわりの筋肉が緊張している状態ですが、四十肩・五十肩は肩まわりの組織が炎症を起こしている状態です。
そのため、四十肩・五十肩では肩こりとは異なる肩の強い痛みや可動域制限がみられます。

四十肩・五十肩の症状は、「急性期」「慢性期」「回復期」の3つの時期に分けられます。
それぞれの時期ごとに肩の状態が異なるため、対処法も異なります。
適切に対処するためにも、時期ごとの症状の特徴について知っておきましょう。

 

【四十肩・五十肩の症状】

●急性期

四十肩・五十肩の発症直後で、炎症が強く現れる時期です。
強い肩の痛みを覚え、安静にしていても痛むことがあります。

四十肩・五十肩の特徴的な症状である「夜間時痛」はこの時期に生じます。
夜間に肩の痛みが強まるため、眠れなくなることもあります。

●慢性期

急性期の炎症が落ちついてくる時期を慢性期と呼びます。
急性期に比べると痛みが落ちついてきますが、鈍い痛みが続くといわれています。

慢性期になると、組織の癒着により肩や腕の動きが制限されます。
結滞・結髪と呼ばれる障害が現れ、次のような動作で痛みや動かしにくさが生じることがあります。

・髪を結ぶ
・エプロンの紐を結ぶ
・高い位置の洗濯物のとりこみ
・服の着脱動作
・背中に腕をまわす動作

●回復期

四十肩・五十肩が回復へと向かっていく時期です。
肩の痛みや動きの制限は緩和されていき、少しずつ可動域も広がっていきます。
しかし、無理に動かすと再発することもあるため注意が必要です。

四十肩・五十肩を発症すると、日常生活に支障をきたすことがあります。
四十肩・五十肩の症状が現れた場合には、次の方法で対処しましょう。

 

【四十肩・五十肩の対処法】

●寝方を見直す

急性期には肩の痛みが強く、寝るときの姿勢で痛みが悪化することもあります。
痛む方の肩の下にクッションを入れると、肩にかかる負担が軽減されて症状の悪化防止につながります。

●患部を冷やす（急性期）

急性期は炎症が強いため、患部を冷やすと炎症が抑制されて痛みの緩和も期待できます。
保冷剤や氷水を入れたビニール袋などを使用して冷やしますが、直接冷やすのではなくタオルで巻くようにしましょう。
冷やしすぎると血行不良になってしまうため、10分ほど冷やして様子をみることが大切です。

●運動療法（慢性期）

慢性期には痛みも落ちついてくるため、無理のない範囲でストレッチを行うようにしましょう。
そうすれば、早期改善や再発予防につながります。
運動療法では、500mlのペットボトルを持って行う振り子運動がおすすめです。

・振り子運動
①ペットボトルを片手に持ち、もう一方の手は机やテーブルについて身体を支える。
②ペットボトルを持った方の手の甲を身体の外側に向け、ゆっくりと前後に10回ほど動かす。
③次に、左右に腕を10回ほど動かす。
④肩と腕全体をつかって円を描くようにゆっくりと10回ほど回す。
⑤反対側も同様に行う。

●温める（慢性期）

痛みは落ち着いてきているものの、肩につっぱりを覚えるときには肩まわりを温めましょう。
温めることで血行が促進されると、筋肉や腱などの組織がほぐされるため、つっぱり感の緩和につながります。

四十肩・五十肩は再発してしまうこともめずらしくありません。
四十肩・五十肩が再発しないように日頃から予防を心がけましょう。

また、慢性的な肩こりがあると四十肩・五十肩につながりやすいため、肩こりのある方も予防を心がけることをおすすめします。

 

【四十肩・五十肩の予防法】

●ストレッチを行う

肩まわりの柔軟性が低下すると炎症が起こりやすくなり、四十肩・五十肩を発症する可能性があります。
日頃から肩まわりや肩甲骨まわりのストレッチを行い、柔軟性を維持しましょう。

・肩のストレッチ法
①椅子に座り、背筋を伸ばす。
②肩を顔に近づけるように上げる。
③そのまま一気に脱力して肩を下ろすという方法を5回ほど繰り返す。

・肩甲骨のストレッチ法
①仰向けに寝て、膝を抱えこむ。
②上を向いた状態で左右に何度か転がり、肩甲骨の筋肉をほぐす。

●適度な運動をする

適度な運動は血行を促進させ、筋肉といった組織の柔軟性を高める効果があるといわれています。
また、運動を続けると筋力が高まるため、肩にかかる負担が軽減されて四十肩・五十肩になりにくい肩をつくることが期待できます。

運動は継続することが大切なので、簡単なウォーキングなどから始めてみましょう。
ウォーキングを行う際には、大きく腕を振るようにすると効果的です。

●姿勢を正す

姿勢が悪いと肩に負担がかかり、筋緊張から炎症が起こりやすくなります。
日頃から姿勢を正すように心がけましょう。

とくにデスクワークでは猫背になりやすく、四十肩・五十肩につながりやすいといわれています。
背筋を伸ばせるように、パソコン環境を見直すことがおすすめです。

当院では、まず主訴と通院歴の確認を行います。
症状の原因になっている場所を特定し、悪化、好転する姿勢や動きを把握します。

おもに鍼灸施術を行い、痛みを起こす炎症の抑制を図ります。
必要に応じてハイボルトとテーピングを用います。

四十肩・五十肩のおもな原因は加齢にともなう柔軟性や機能の低下といわれています。

疼痛が強い場合は、運動やストレッチは避け、痛みがでにくい体勢や寝方のアドバイスをさせていただきます。
痛みが落ち着いてきたら、柔軟性を向上するストレッチや運動、生活のアドバイスを行います。